─私立 中高一貫校がいま、考えていること─
主体性を重んじる教育
幕張新都心がまだ開発途上にあった1983年に、本校は誕生しました。今でこそ、オフィスビルや商業施設が立ち並ぶ人気エリアですが、開校当時は道路も鉄道も十分に整備されておらず、人口もまばらでした。そこから41年間、本校の発展は、地域の成長とともにあったといえます。都心の学校に比べて、広い校地に恵まれていることもあり、四つのグラウンドや温水プールにサウナ、理科棟、茶室などがそろう充実した教育環境が自慢です。先日は、図書館棟内のラーニングコモンズをリニューアルしました。いちばんの目玉は、スペースのどこで話しても声を拾えるよう、天井に集音マイクを設置したことです。皆さんも、海外企業のプレゼンテーションなどで、発言者が舞台を自由に移動しながら、身振り手振りで自社のセールスポイントをアピールする姿を目にしたことがあるかと思いますが、これからの時代、それは一つの国際標準のスキルです。将来、生徒たちが世界で活躍するためにも、プレゼンスキルの獲得は必須と考え、その第一歩として今回の環境整備に至りました。生徒たちは、われわれの想像以上にプレゼンの練習の場として活用してくれており、非常に頼もしく感じています。
さて、本校が開校以来大切にしているのは、みずからの手で調べ、みずからの頭で考える「自調自考」の精神です。たとえば、修学旅行や校外学習は、ほとんどが現地集合・現地解散です。生徒たちは事前学習の中で、みずからの研修テーマや見学先を決定し、現地までのルートも調べ行動します。卒業生に聞いた話によると、大人になってからも同窓生達と現地集合・現地解散で海外旅行を楽しんでいるのだとか。仲間と楽しみを共有しながらも、決して依存しない。そうしたバランスの取れた自立心を伸ばす教育が、本校の最大の特徴といえるでしょう。
今でこそ、シラバス(学習計画)に沿って授業を進める学校が増えてきましたが、その導入にいち早く着手したのも本校です。シラバスとは、入学から卒業まで、各教科6年間の授業計画と解説が書かれた、いわば学びの設計図。これがあることで、同じ教科を担当する教員同士で学習のゴールとプロセスを共有できるほか、現在の単元の内容が未来にどうつながるかを俯瞰的に把握できるだけではなく、つまずいたときの対処方法も見えてきますから、生徒の主体的な学びを促すうえでも非常に効果的です。このシラバスがあるからこそ、日々の学習でも「自調自考」が実践できるのです。
多様な価値観が刺激を生む
本校の強みの一つは、共学校であるということです。男女が同じ環境で学び、ジェンダーの平等と多様性を尊重し合う雰囲気の中から、それぞれが能力や可能性を発揮できる校風を生み出していると思います。
もう一つの強みは、開校当初から帰国生を多く受け入れている点です。現在、全校生徒の約10名に1名が帰国生です。特に帰国生には、自分と他人の価値を認め、相対化したり、客観視したりする能力が養われている自律的な生徒が少なくありませんから、一般生にとって良い刺激になっているようです。その刺激は、生徒の視野を広げる良いきっかけとなっており、学外の大会やコンクールにも積極的に挑戦しています。ニューヨークで行われる高校模擬国連国際大会へは、模擬国連部の高3生2名が日本代表団の一員として派遣され、昨年度も優秀賞を受賞しました。実は2014年に日本初となる最優秀賞を獲得したのも本校の生徒でした。
ちなみに本校の帰国生入試は、英語(筆記・リスニング・エッセイ)と面接のみ、4科の試験はありません。エッセイや面接を通じて、みずから考え、それを論理的に表現できる力が確認できれば、他教科に多少の不安があっても、入学後の指導で十分に力をつけ、結果も出ているからです。
今春は海外大学に64名が合格
キャリア教育にも力を入れています。たとえば、これからの社会で求められる人材育成を目指した、Globalism(国際性)、Leadership(統率力)、Foresight(先見性)、Curiosity(好奇心)の頭文字からなる「GLFCプログラム」では、卒業生を中心とした外部講師を招聘して、生徒にさまざまな将来の選択肢を提示しています。医学部見学セミナーや東京大学研究セミナーなど大学受験に直結するものから、金融経済セミナーや起業セミナーなど社会人としての活躍を見据えたものまで多岐にわたり、生徒たちはそこで得た情報をみずからのキャリア構築に役立てています。
これらのキャリア教育には、明確な目的意識を持って進路を選択し、大学受験にも臨んでもらいたいという願いも込められています。その結果、例年、東京大学には70名前後、医学部医学科には100名超が合格しているほか、美術や音楽の才能を生かして、芸術系の大学・学部に進学する生徒もいます。伝統的に海外大学志望者が多いのも特徴で、今春は64名が合格しました。
この海外大学における高い合格実績を支えるのが、先輩の存在です。毎年6月から7月にかけて、海外大学に進学した卒業生を招き、受験を検討し始めた時期や大学選びのポイント、実際の大学生活の様子など、体験談を交えた説明会を実施しています。彼らの体験談やノウハウという武器があるからこそ、在校生たちは自信を持って、海外の名だたる大学へと羽ばたくことができるのです。また、海外大学合格者の内訳は、帰国生と一般生が半々です。どんな生徒にも海外に挑戦する門戸が開かれているのも、大きな特色といえます。
本校は、さまざまな方向をめざして、多彩な個性を持つ子たちが集まる学校です。たえず視野を広く持ち、新しいものに挑戦し、そこから多くのことを学ぼうとする貪欲な姿勢が、価値観の新陳代謝を促し、それぞれの成長を導いているように思います。
日本はこれまで、均質的な国民性を生かして、経済成長を遂げてきました。しかし、それだけでは、世界の急速な変化に対応することはできません。これからは一人ひとりが個性を発揮すると同時に、異なる才能を融合させることが求められます。まさにそれこそが、本校がめざす教育なのです
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