WILLナビ:よみうりGENKI 次代を担う人材を育てる中高一貫校特集
次代のリーダーに求められる力とは
─私立 中高一貫校がいま、考えていること─
  1. 多様性にあふれた環境で「他・己・事物」に向き合う
  2. 段階的な探究学習を通してPDCAのサイクルを習得
  3. 目標とするのは「文武両道」 勉強以外にも強みを持って
多様性にあふれた環境で
「他・己・事物」に向き合う

 校是に「去華就実」、校訓に「三敬主義」を掲げる本校では、「豊かな学識と表現力」「次世代のタフなリーダー」「伝統の継承」を三つの柱とする“SOJITSU PRIDE”を持つ若者の育成を実践しています。校是の「去華就実」には、見た目の華やかさよりも中身を大切にするという意味が、校訓の「三敬主義」には、「他」「己」「事物」の三つに敬意を持って向き合うという意味が込められています。この二つは、本校に在籍する教職員と生徒の行動指針であるとともに、社会に貢献するリーダーとして必要不可欠な視点でもあります。
 さて、本校は、初等部から進学する生徒、中学受験、高校受験から入学する生徒とさまざまなバックグラウンドを持った子どもたちが集まります。たとえば、初等部の子どもたちは、6年間の授業のなかで調べ学習をたくさん経験してきているので、一つのテーマを多角的に考えたり、みんなの前で発表をしたりすることが得意です。一方で、中学受験を経て入学してきた子どもたちは、漢字をよく知っていますし、難しい計算もお手のものです。両者が一つの空間で学ぶことで、自分にないものを持っている友人に対し「すごいな」「もっと私もがんばろう」と素直に思えることが、お互いの成長につながっています。当然、一人ひとりの個性の部分でも、元気な子もいれば、物静かな子もいますし、スポーツが大好きな子もいれば、文化系の趣味を大切にしている子もいます。それぞれの違いを認め、尊重し、互いに高め合う本校の風土は、多様化する社会において、これからますます大きな意味を持つだろうと考えています。
 本校での学びのゴールは、「課題の設定」「情報の収集」「整理・分析」「まとめ・表現」という探究のPDCAサイクルを自然に回せるようになること。学年に応じた段階的なステップを踏むことで、課題発見能力や課題解決能力を無理なく磨いていきます。

段階的な探究学習を通して
PDCAのサイクルを習得
「総合プロジェクト」ガイドブックの制作
 

 本校は、早稲田大学とは別法人の系属校ですが、大学とのつながりは深く、卒業生のほぼ全員が早稲田大学に入学することができます。大学受験がない分、本質的な学問に継続的にコミットできるのは、本校で学ぶ最大のメリットと言えるでしょう。具体例としては、高2以上を対象とした、早稲田大学の正規授業を大学生とともに受講できる「高校生特別聴講制度」があります。試験で所定の成績を修めた場合は、高等部に在籍しながら大学の単位を取得することができます。加えて、高3の12月に進学先の学部・学科が候補者として内定すると、1月からその学部に特化した特別授業が始まります。大学数学の基礎や、会計や統計、第二外国語など、いずれも高校の範疇を超えた内容で、大学の先生から直接講義していただく機会もあります。
 また、大学受験にとらわれない学びとして、中等部・高等部ともに力を入れているのが、探究学習「総合プロジェクト」です。教員のなかに「総合プロジェクトチーム」を作り、中等部・高等部それぞれに、学年に応じたプログラムを構築しています。具体的には、中1では、学校のある国分寺市を探索し、気づいたことをまとめる「国分寺探検」、中2では、JTBパブリッシングの協力の下、ガイドブックの制作を行う「『るるぶ』特別編集」、中3では、みずから関心のあるテーマを見つけて調査・研究を行う「卒業研究」に取り組みます。

目標とするのは「文武両道」
勉強以外にも強みを持って
新校舎「125号館」
 

 近年、早稲田大学は「Waseda Ocean構想」を打ち出し、国際化に向けた大胆な教育変革に乗り出しています。本校のスクールミッションは、早稲田大学の中核となる学生を育てることですから、本校でもそれに見合う質の高い国際教育を展開するべく、様々な取り組みをしているところです。たとえば、生徒は、1人1台所有するPCおよび英語学習アプリを活用し、英語4技能の向上を図っているほか、高等部ではTOEFL ITP等の英語資格試験の受検を必須としています。海外研修では、中1から参加できる約2週間のUCLA語学研修や、中3を対象としたラグビースクールでの1年間の正規留学を筆頭に、さまざまな国と地域を拠点としたプログラムを展開。以前までは、高等部で1年間留学する場合、帰国後は一つ下の学年に戻ることを義務づけていましたが、現在は、留学先での学習成果が認められれば、元の学年に復学できるようになりました。もちろんその場合も、早大推薦の資格を失うことはありません。こうした環境整備もあってか、留学を希望する生徒は増加傾向にあります。
 さて、この4月に新校舎「125号館」が完成しました。グラウンドに面する3階建ての建物で、1階には生徒自治の部屋、更衣スペース、面談室、トレーナールーム、2・3階にはさまざまな授業形態に合わせて自由にレイアウトできる学習スペースを設けています。探究学習や少人数制ゼミを充実させるなかで、数年前から課題となっていたのが教室の不足でした。新校舎によってその悩みも解消され、今後の教育のさらなる発展が期待されます。
 本校は、「文武両道」の学校です。早実の「武」と聞くと、野球やテニスなど、花形のスポーツを想起される方が多いかもしれません。しかし、「茶道の作法を上達させる」「数学オリンピックをめざす」なども立派な「武」です。学生として取り組まなければいけない「文」以外のプラスアルファが、生徒一人ひとりにとっての「武」であり、「勉強のほかにも頑張っているものがある」という生徒であってほしいと思っています。
 わたしたちが求めているのは、何事にも一生懸命に取り組める生徒です。「こんなことをやりたい」「あんなこともやりたい」というチャレンジ精神の旺盛な受験生に来てほしいですし、本校はそういう生徒が伸びる学校だと思います。日ごろからいろいろなことに前向きに挑戦する姿勢を大切にしてください。

これからの時代に求められる人材像─中高一貫校で育む力─ 聖光学院中学校高等学校 校長 工藤 誠一 先生 早稲田大学系属早稲田実業学校中等部・高等部 中高等部校長 佐々木 慎一 先生 渋谷教育学園幕張中学校・高等学校 校長 田村 聡明 先生